カトゥーン部会2005年度第5回研究会
1日時
2005年9月10日(土) 16時~19時
2場所
神奈川近代文学館
3報告者
大城冝武 氏(沖縄キリスト教学院大学)
4報告題名
「マンガ形式-カートゥーン、パネル、ストリップス、そしてアニメーション」
5報告概要:
「マンガ形式-カートゥーン、パネル、ストリップス、そしてアニメーション」
5報告概要:
全体として、Ⅰマンガとは何か、Ⅱマンガの形式的分類、Ⅲマンガの感情調、Ⅳマンガの理論、Ⅴマンガの面白さ、Ⅵ日本おけるマンガの近現代史、の6章から構成される報告がなされた。
Ⅰでは、マンガを、絵と言葉によって森羅万象を描くものと位置づけ、その表現特性を①荒唐無稽、②奇想天外、③外面から内面を描くこと、にあるとした。
Ⅱでは、①cartoon(1枚もの)② pane(4コマ)③ strip(続き物)にわけ、それぞれの特徴が示された。たとえば、ストーリー性が、複数コマの② 以降から顕在化することが指摘された。Ⅲでは、心理学の知見と方法から得られた説明がなされた。
「緊張――弛緩」と「興奮――沈静」の2つの軸を直交させた4分割の空間を「ロマン・文芸」「ユーモア・コメディ」「お笑い・ギャグ」「アクション・活劇」として、マンガ作品をあてはめた研究が紹介された。
Ⅳでは、マンガの理論として、記号学・言語学に基づく11の仮説とそれに伴う10の定義が詳説された。コミュニケーション行為としてのマンガ理解、表現論 に通じる諸仮説など興味深いものが提示された。さらにⅤでは面白さの要因として10の要素が指摘され、後発の映像媒体が当該要因を踏襲している点が多いこ とが示された。
こうした理論仮説を近現代の日本マンガ史の文脈で、特徴的な作者と作品を概説したのがⅥ であった。近代日本の思想家(実業家)や文学者のマンガへの関心は、西欧諸国のマンガ文化の影響を裏付けているものであった。
報告の合間に、参加者からの意見交換がなされた。たとえば、「面白さ」のレベルは、読み手の行動に表れるところだけでなく、関心を引くところからも含まれ ていることや、少女マンガのコマ割りの複雑さが、記号制作(インコーディング)する「送り手」と復号化(ディコーディング)する読者(「受け手」)とのせ めぎあいの結果であり、より多くの「受け手」に伝わることを妨げているのではないかといったことが論点となった。