著作権部会 2005年第2回研究会
〔日 時〕 2005年7月27日(水) 午後5時~7時
〔場 所〕 日本弁理士会館第3会議室(東京都千代田区霞ヶ関3)
〔出席者〕 秋田孝宏、牛木理一、尾崎博彦、堤健太郎、内記稔夫、馬場巌
〔報告者〕 菊池武(弁護士・会員外)・内記稔夫
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〔議 事〕
研究議題1:「職務著作の権利帰属の諸問題」 弁護士 菊池武先生
法人等における職務上の発明は特許法第35条に規定され、「特許を受ける権利」は発明者個人に帰属することを原則とする。一方、法人等における職務上の著 作は、著作権法第15条に規定され、法人著作として、著作権は法人に帰属することを原則とする。このように従業者の職務上の発明と著作とでは、その権利帰 属の主体が大きく異なっている。
例えば、大学教員等の発明は、発明した個人に帰属するのが原則であり、発明から生ずる「特許を受ける権利」は、契約に基づいて大学等に帰属させるというよ うになっている。しかし、研究者の論文は、著作権法でいう法人著作とはならず、専ら個人の著作と考えてよい。
企業からの委託研究の場合は、契約上、資金を出す企業にその発明の「特許を受ける権利」が帰属するようにされているであろうが、その権利を生み出した新技術に関する論文は、個人著作と見做すべきであろう。
学生の場合は、企業内の研究などの場合も、契約により「特許を受ける権利」の譲渡が考えられる。
問題なのは、企業内の研究における発明者の認定であり、日本の現状では、真の発明者が誰かを認定するのは困難な場合が多い。裁判では、中村修二博士と日亜 化学工業との青色発光ダイオードをめぐる事件や、オリンパス光学工業事件などのように、発明者が退職後に旧勤務先を、発明の対価が少なすぎると訴えたケー スばかりであるが、一発明に従事する企業内での発明者を明確にすることの方がまず重要な問題であろう。
共同研究の場合、「特許を受ける権利」が共同研究者全員から企業や組織体に移転され、研究に加わった人たちに権利が帰属しないという形をとる場合が多いと 思われる。この場合の研究報告書の執筆形態は一人で執筆したり、数人で執筆したりさまざまであるが、発明の主体と著作者を一致させることはないと思われ る。
特許法と著作権法の関係は、発明の権利化と著作権とは連動していない。発明の「特許を受ける権利」が使用者に移転しても、発明に関する論文の著作権は研究 者個人に帰属すると考えられる。著作者人格権は、法人よりも自然人である研究者が有するのが自然である。
特許法と著作権法との整合性については、著作者人格権に留意することが必要だが、著作権法の規定を特許法に倣って修正すべきであろう。
研究議題2:「貸与権連絡協議会との合意問題」について 内記稔夫会員
2004年6月に著作権法が改正され、2005年1月から書籍や雑誌にも貸与権が認められることになった。大手出版社が中心となって作られた貸与権セン ターは、平成12年以前に開店し、貸出に供している本が1万冊以下の貸本屋については、「旧来の貸本屋」として貸与権料をかけないことを認めているが、事 実上、全国貸本組合連合会の組合員は「旧来の貸本屋」と認める事務処理がなされている。
また、貸与権料がかかるレンタルコミック店の団体に貸与権センターから口頭で、貸与権料としては1冊280円、また3カ月間は新刊本をレンタル用に使わないとの条件の提案がなされているが、まだ合意には至っていない。
280円の内訳を聞くと、80円がマンガ家の取り分で、200円が出版社と取次社の取り分となる計算のようである。どのような合意がなされるかまだ不明で あるが、合意がなされた場合、2005年1月に遡って貸与権料が請求される可能性があるという。