カトゥーン部会2024年度第1回研究会


日本マンガ学会カトゥーン部会2024年度第1回研究会報告

 

Ⅰ 日時

 7月6日(土)15:00~17:00

 

Ⅱ 場所

 Zoomによる開催

 

Ⅲ 報告者・論題

 第1報告 濱中麻梨菜さん

(東京大学大学院 総合文化研究科地域文化研究専攻「人間の安全保障」プログラム

博士課程1年 )

「風刺画とナショナリズム

ーナージー・アル =アリーの風刺画に見る占領下のパレスチナ1983年~1987年-」

 

 第2報告 横田吉昭さん(風刺漫画家 学術博士)

 「台湾での政治風刺漫画についてのコンフェラス  国家漫画館訪問報告」

 

Ⅳ 研究会報告

  横田さんの報告では、台湾の「国家漫画館」が紹介された。ここで見られるように、いわゆる漫画が大半であり、、風刺漫画は、Web上わずかに見られる程度であるという現状が伝えられた。その中で『台湾パック』に関する研究をされている方のご紹介があった。

 『台湾パック』については、『Punch』のアジア諸国への展開の一環としてとらえられるという説明が参加者からなされた。

 濱中さんのご報告は、ナージー・アル=アリーという漫画家の生涯と彼の描いた風刺漫画作品を通じて、パレスチナの政治状況と風刺漫画との関係を明らかにしようとするものであった。アル=アリーの作品に登場するキャラクター「ハンダラ」(Handala)に着目して、当該風刺画が誰を風刺しているかはもとより、誰に向けて支持を求めているかにまで探ることを試みた報告であった。

 質疑応答では、作品管理の現状、媒体メディアとの関係(紙面構成、読者の反応、掲載時期)、が議論された。また、登場人物(「ハンダラ」)についての、図像(解釈)学的視点(この人物が見ようとしない/黙想している/その他などの姿で描かれるときに意味するもの、人、集団は何か)からの問いがなされた。さらに、掲載媒体の読者像が大衆化とどうかかわるかといったことも提示された。

 風刺漫画と政治を見るにあたって、読者や掲載媒体が置かれている社会や政治環境を知ることは重要である。加えて政治(政策)に直接影響力を与える統治機構との関係もまた重要であることを両報告から教えられた。政府や統治機構が、風刺漫画作品およびそこに登場するキャラクターをシンボルとしてどのようにみていたのか、またそれが統治主体の変容によってどう変わったのかといった「象徴の選択と操作」について考えるきっかけを与えてくれた。

(文責 茨木正治)

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