カトゥーン部会2015年度第2回研究会
Ⅰ日時
2016年2月1日(月)13:00~16:00
Ⅱ場所
早稲田奉仕園セミナーハウス102号室(169-8616 東京都新宿区西早稲田2-3-1)
アクセスマップ:サイト内の「印刷用PDFファイル」を参照
Tel.:03-3205-5411
Ⅲ研究会報告概要
第1報告で山本拓也氏は、マンガ作品の「実写化」について、映画とテレビ番組になったマンガ作品の傾向を統計資料を用いて概観し、この90年間で増加傾向にあることを示した。続いて、「暗殺教室」(『週刊少年ジャンプ』掲載)の「実写化」について、その物語展開、登場人物の描写、および製作者と視聴者の印象と意図について考察した。「実写化」されるマンガ作品の掲載媒体、「実写化」されるメディアの変化(その盛衰)、受け手の情報環境の変化が「実写化」の「効用」を知る大きな手掛かりとなったことが示された。
第2報告では寺田寛倫氏は、1930年代アメリカで登場した「フィルムノワール」という映画の「一形式」が、戦後フランスで注目されたことを、後に1980年代に香港で登場した「香港ノワール」という「一形式」の登場と衰退とを比較することから、「フィルムノワール」のもつ意味は何であったのかを問うた。
この2報告に対して、参加者からは多くの質問や論評がなされた。山本報告については、文化表象「翻案」の歴史といった大きな視点からの理解を問うたものや、映画作品の「ヒット率」の比較について制作コストの規模を考慮すべきであるといった指摘や、「実写化」しにくいという視点に着目して、マンガそのものの属性を捉え返すことも考えられたのではないかといったことが指摘された。寺田報告については、「フィルムノワール」という名称がつけられた当時のアメリカ社会の状況と、それが継承されたフランス社会の社会状況に類似点(経済・社会の破綻からくる閉塞・頽廃意識)を考慮してみる必要があるのではないか、それに呼応して、こうした「暗い」映画を「暗い」と排除する社会ははたして健全かという問いが現代の言論の閉塞性感覚に連動して指摘された。
なお、第3報告として山本優希氏および第4報告で茨木の報告が予定されていたが、時間の関係で山本優報告は概要のみ、茨木報告はレジュメ配布のみとなった。
問い合わせ
茨木(部会責任者)
043-236-4650またはibaragi@rsch.tuis.ac.jp