カトゥーン部会2011年度第1回研究会


1.日時 22011年8月27日(土)14:00~18:00

2.場所 早稲田奉仕園セミナーハウス中会議室100号室
(東京都新宿区西早稲田2-3-1)03-3205-5411
http://www.hoshien.or.jp/map/map.html

3.(1)池上 賢(立教大学)
「社会学におけるマンガ研究の視座と展開――先行研究の整理・検討から――」
(2)雑賀忠宏(神戸大学)
「『マンガ・サブカルチャーズ』の再帰的構成――『<非実在青少年>規制問題』における言説布置を手がかりとして――」

4.研究会報告:各報告の概要と討論の内容は以下の通りであった。

⑴ 池上報告
戦後日本社会学におけるマンガ研究の通時的変化を先行研究の整理をもとに検討し、戦後のマンガへの指針を模索することを目的とし、主として『社会学文献情報データベース』を用い、それに若干の補足を加えつつ一覧表を作成した。その結果、1950年代から70年代には、思弁的な論考が多く、1980年代になって多様な領域・論点の考察が登場し、1990年代には調査に基づく実証研究が行われるようになったという傾向が見いだされた。
参加者から、マンガ研究が社会学にどのような貢献をもたらすのかを明らかにすることで開かれたマンガ学(会)への方向が見いだせるのではないかといった指摘や、発表媒体の特質(日本社会学会の組織としての特徴など)、「引用」のされ方に着目することでマンガ研究の社会学へのインパクトを読み解くことができるのではないかといった指摘など、その他多様な論点が抽出された。

⑵ 雑賀報告
2010年東京都の「青少年保護育成条例」改正をめぐる動向において、クレイム・対抗クレイムの連鎖を通じてマンガの下位文化イメージが再構成された過程を検証する。当該条例に関する言説と、50年代の「悪書追放運動」、90年代「有害コミック問題」および2000年代の「準児童ポルノ」問題の言説を、社会問題のクレイム申し立てにおけるレトリック分析を手掛かりとして考察した。その結果、都条例の言説においてはそれ以前の問題で示された特徴がいっぺんに顕在化したとともに、分節化された「悪いマンガ」の主体を葉叙する動きが見られた。
  これに対して、参加者から以下のような指摘・質問がなされた。報告者の観察者としての立場はどこにあるのか、条例反対側の支持が得られにくいのはなぜか、「都条例」とそれ以前の変化として示された、マンガを一般社会への「包摂」と「排除」の変化の要因は何か等々。「都条例」が「政治力学」で成立したとしても、マンガ規制に反対する側の言説(対抗クレイムの醸成)が規制側に比べて大きなシンボルとなりにくいことについて、と排除がマンガからそれを所有する人間に向かっていること、および、「都条例」以前の問題と「都条例」を時系列に列挙するのではなく、並列的に提示すべきではないか、といったことが議論の中心となった。 

  (文責 茨木正治)

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