カトゥーン部会2004年度第3回研究会
- 日時
2004年8月21日(土)14:00-17:00 - 場所
大阪府立国際児童文学館セミナー室 - 研究会報告
個々の作品鑑賞にとどまらず、広く新聞漫画の性質、現状、将来などを参加者が自由に語り合う中で新聞の一齣漫画への関心・認識を培うことを目的にした。新聞漫画一般に関する議論が展開され、示唆に富む会合となった。
素材として、「朝日新聞「毎日新聞」、「読売新聞」の2004年4月から6月までに主として掲載された一齣漫画をもちいて、それぞれ素材提供者に選定の経 緯を報告してもらい、それを「契機」として、参加者全体を含んだ議論に入っていった。新聞漫画の衰退という古くて新しい問題について、歴史史料、同時代経 験、日常性感覚、送り手組織の関係(作者と新聞社など)などから、活発な議論がなされた。多岐に渡る議論を乱暴にもまとめると、以下の3点になった。
第1に、作者の過剰な「労働環境」と読者の過剰な情報環境(類似した媒体に多く接触できる)からくる「期待」の相互作用の指摘や、そこから、マス・メディ アとしての新聞漫画の限界とそれに代わるものとしての「党派性」や「宗教性」をもつメディア、(あるいは同質な「階層」間の「コミュニティ・メディア」) の中の漫画への着目が示された。第2に、史料(資料)としての新聞漫画について、「生鮮食料品」であって、賞味期限の短いものが面白いといった、時事性と 一般性とのかかわりの中で新聞漫画を捉えていく必要性が見出された。第3に、一齣漫画が想定する読者像と現実の読者についての議論がなされた。素材提供者 から庶民の日常の政治(小政治)と「大政治」(国会、政党、選挙など)との接点をめざしているが、いまのところ庶民は傍観者の役割しか与えられていないと いう点が指摘された。これは、マス・メディアとして不特定多数の読者を想定することに起因しており、それゆえ、上記の「コミュニティ」ないし「党派性」 「地域性」媒体の一齣漫画には、読者・庶民の作品(内容)への関与が大きいのではないかといったことが示された。
こうした論点に加えて、新聞漫画を構成する紙面全体とのかかわりを意識することや、時系列的な考察だけでなく、同一テーマに関する横断的な考察をする必要があることが示され、次回の素材提供の際の課題となった。
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