カトゥーン部会2005年度第2回研究会
1日時:2005年5月21日(土)13:00~17:30
2場所:関西大学尚文館4階408号室
3報告者:秦 美香子(神戸大学大学院)
4報告題目:
「日本の-女性の-セクシュアリティ」とマンガ表現
-英文先行研究の日本に対する眼差しをめぐる一考察
5報告概要
本報告では、日本のマンガ作品の分析を行う、英文で書かれた研究を概観した。そして、それらの研究の、「日本社会におけるジェンダー・セクシュアリティを めぐる状況」と「マンガに描かれるジェンダー・セクシュアリティ」に対する捉え方について考察した。
本報告では、英文で書かれた研究8本を取り上げ、それらを、マンガと社会の関係に対する捉え方から、「反映論的立場」(マンガを、社会の状況をそのまま書 き写したものと見る立場)、「影響論的立場」(マンガは、社会の抑圧に対するはけ口や、抑圧からの逃げ場として描かれると見る立場)、「構築主義的立場」 (マンガは社会の影響のもとで描かれるが、一定程度の自立性を持ち、社会に対して影響を与えたり、社会の状況を脱構築したりする志向を持っていると見る立 場)に分類した。
そして、反映論的立場、影響論的立場からの考察では、マンガの持つ積極的な力(報告者はこれを、ジェンダーの視角から言えば、現在の社会のジェンダー秩序 に対するオルタナティヴを呈示するマンガ表現にあると考える)が見出されていないと述べた。
以上のような内容の報告をもとに、「反映論」と「影響論」の区別の適切さをめぐる質問などが出たほか、一般的な読みの際にはほとんど注目されない要素にも こだわる/こだわらざるを得ない分析的読みのあり方が、分析者の立つ文化的背景の相違と相まった結果、日本の研究と英文の研究では時に大きく異なる読みが なされることについてどう考えるかという問題、日本語による研究と、日本語以外による研究の交流が十分になされていない問題、マンガをいかに理論付ける か、マンガ研究者をどう位置付けるかをめぐる問題などについて、議論が行われた。
(文責 秦美香子)