カトゥーン部会2005年度第8回研究会


1日時:2006年2月18日(土)14:00~17:30

2場所:立教大学 池袋キャンパス 12号館 3階
社会学研究科共同研究室(部屋番号:B327)
3報告者:茨木正治 氏(東京情報大学)

4報告題目:「政治漫画を読むーー第44回衆議院選挙における政治漫画を手掛かりにーー」

5報告概要:

新聞の主に政治面に掲載される一齣漫画である「政治漫画」は、政治・社会現象をどのような視点で描き出しているのか。政治漫画に表されるものを通じて、対 象としての政治そのものを考えるだけでなく、メディアとしての漫画それ自体を考える契機としたい。こうした意図から、2005年9月11日投票・即日開票 された第44回衆議院選挙をテーマとした「政治漫画」を紹介した。「政治漫画」は、掲載媒体である近代の新聞の成立とともに存在し、政治・世相の解説と風 刺・評論の機能を内包していた。
選挙における「政治漫画」および報道の研究の動向の紹介の後、事例の考察の報告となった。解散から投票までのほぼ1ヶ月の間に4紙(「朝日」・「毎日」・ 「読売」・「東京」)に掲載された92枚の政治漫画のうち、「選挙」をテーマとするものが88枚あった。従来の研究(5割程度)に比べ「関心」の高さを反 映した結果ではあり、テーマについては「解散」「刺客」「新党」「選挙運動」「争点」「有権者の反応」といった、選挙報道のルーティンと、44回選挙のト ピックから構成されていた。しかし、たとえば、「解散」についての「政治漫画」では、解散における「正当性」問題を問う作品のような「鳥瞰図」的な視点の 作品がみられないことや、作品のモチーフと符合する記事が見い出しやすかったことから、数の多さと内容の独自性とは比例せず、記事解説に近い内容のものが 散見された。こうした、テーマ選定における記事と「政治漫画」との類似性を見ると、この「選挙」において、映像メディアによる「小泉劇場」への加担という ことに、少なくとも「政治漫画」をみるかぎりでは、新聞メディアは強くは主張できないのではないかという指摘がなされた。

報告後、参加者から、「政治漫画」という名称の起源、分析手法の問題(期間、分析単位、画像の言語化の問題)、「政治漫画」考察の視点(ジャンルとして のーーマンガと「政治漫画」――、内容分析における――言語としての活字・映像との対比――、構造としてのーーコミュニケーションの「送り手」の関係の考 察、「受け手」の読み方を含んだ「リテラシー」の問題――)の可能性についてコメントないし議論があり、さらに「ムハンマドの『風刺画』」に関する「政治 漫画」およびカトゥーンと風刺の問題について種々議論がなされた。

(文責 茨木正治)

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