カトゥーン部会2006年度第2回研究会


1日時:2006年6月17日(土) 14時~17時
2場所:神奈川近代文学館
3報告者:菅野のどか氏(お茶の水女子大学大学院)
4報告題名:オーディエンスのマンガ受容にみられるジェンダー
5報告概要:
少年・少女マンガの受け手がマンガに描かれたジェンダーにどのように反応しているのか、受け手のジェンダーがマンガ接触・マンガからの意味の汲み出しにど のように働いているのかを明らかにするために、中学生40名へのインタビュー調査を行った。
その結果からは、次のような傾向がみられた。男子では、少女マンガを読まない者がいるが、女子には少女マンガと少年マンガの双方を読み、各々に否定的な者 と肯定的な者がいる。好きなキャラクターとして男子は、全員が少年マンガの男性キャラクター(そのほとんどが主人公かそれに類するキャラクター)を挙げ、 丸みのあるデザインで等身の低いキャラクターを愛好する率が高い。それに対し女子は、性が刻印された(男女問わず異性として魅力的な)キャラクターを選 ぶ。彼女たちは少年マンガでは、女性キャラクターは選ばず、男性キャラクター(主人公と脇役は半々)を多く選ぶ傾向があった。

また、男子はストーリーの「笑いの要素」「敵・ライバル」「戦い」といった側面を評価していた。少年マンガに描かれる「ライバル・敵」との「戦い」、「仲 間」への「自己犠牲・献身」というコードに反応し、そのような諸価値に彩られたものとして少年マンガを肯定的に、ヒロイックに捉えていた。

女子は、少年マンガにおいて、「戦い」や「敵」の要素にほとんど反応を示さず、「自己犠牲・献身」の対象は多様であり、「仲間」についての語りにも幅があ る。「やさしい・いい人」「格好良い」「夢・目標」「自己犠牲・献身」といった要素への反応が多くみられた。

報告者はこれらの傾向に対し、男子が競争や戦い・女性を排した「仲間」集団への「自己犠牲・献身」を良しとする価値観を受容するのは、彼らが将来的に競争 主義社会での成功を期待されているためであり、女子が「敵・ライバル」といったコードに反応しないのは、女性が自分の成功が他者の失敗に繋がる競争的な条 件のもとでの達成を怖れる傾向があるためではないかと述べた。これに対し、もっとデータから導き出される情報を読み込むべきであるといった意見や、今後の 調査に対する助言等がなされた。(菅野のどか)

 

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