カトゥーン部会2007年度第4回研究会
日 時:2007年10月20日(土)14:00~17:30
場 所:立教大学池袋キャンパス4号館別棟2階4256室
報告者:池上 賢(立教大学大学院社会学研究科博士課程後期課程)
報告題目:「人生におけるマンガ経験と自己呈示」
研究会概要
本報告では、著者の研究の目的、およびこれまでの研究経過を紹介した上で、現在進行中のインタビュー調査の途中経過の報告を行った。
まず、著者は「団塊の世代がマンガについて語る際に、彼らは自らを団塊の世代として構築する」という仮説を実証するためインタビュー調査を行ったが、仮説は実証できなかったことを説明した。
その上で、新たな研究視座としてマンガ経験を語るという行為そのものを分析する方法を提示した。ここでは、マンガ経験を語ることにより語り手が、自分自身 を主体的に構築していく過程を分析することが目的となる。そして、そのための方法論として個人の生活史に焦点をあてたライフストーリー法を紹介した。
報告では、続いて実際に著者が行ったインタビュー調査の内容を紹介した。ここでは、特に豊富なマンガ経験を持つ3名のライフストーリーを取り上げ、マンガ経験が語られるなかでどのような情報が提示されているか分析した。
結果、マンガ経験が語られる際に、語り手が置かれていた生活状況が共に語られるということが明らかになった。たとえば、ある語り手は自らのマンガ経験について語る際に“父親が不在”であったという家庭環境を語っていた。
また、同時に社会的に共有されているマンガ経験に関する語りに共通の特徴があることが明らかになった。2人の男性は80年代の週刊少年ジャンプの流行につ いて「あの頃」「あの時代」という表現を用いていた。2人は週刊少年ジャンプを個人として経験しただけでなく、時代として皆が経験していたものとして語っ ていた。
今回の報告では、マンガ経験を語るという行為は、語り手にとって様々な情報を提示し、主体的に自らを構築する行為であるということが示唆された。
最後に質疑応答では、複数人数を対象にインタビューを行うべきという提案や、マンガの流布状況や特徴を把握する必要があるという提案、あるいは紋切型の語りはどのようにして出てくるのかという疑問など、多くの議論がなされた。