カトゥーン部会2007年度第5回研究会
日 時:2008年2月23日(土)14:00~17:00
場 所:京都精華大学交流センター 3階 セミナー室2
(京都市営地下鉄「丸太町」駅4,5,6番出口すぐ)
報告者:イム・ヘジョン 氏(京都精華大学大学院)
報告題目:韓国新聞マンガと高羽榮の作品について
研究会概要
韓国新聞マンガの歴史的経緯を振り返り、その転換点となった作品を中心に、現代韓国新聞マンガの特徴と課題を考えることをめざした報告であった。20世紀 初頭、韓国の新聞にマンガが初めて掲載されてから、1960年代までは新聞マンガは時事漫画とみなされていた。1972年に高羽榮が描いたストーリーマン ガ『林巨正』が人気を博したことにより、新聞マンガの認知が、時事漫画から娯楽性のある作品をも含めたものになった。こうした変化の背景として、(1)掲 載媒体の新聞の特徴、(2)作品の原作がもつ社会的認知度の高さ、が報告者によって指摘された。さらに、(2)を敷衍する形で、同じ時代(1972年)の 日本の新聞マンガを比較した。『林巨正』は、韓国の歴史的人物を描いた「劇画」スタイルの漫画であった。上記の比較で、そうした歴史的「劇画」が日本の新 聞マンガにも見出すことができたことを報告者は指摘している。
報告後、質疑応答や意見交換が数多くなされた。論点は多岐にわたったが、大別すると、(1)『林巨正』が受け入れられた社会的・文化的背景に関するもの (国内、国外――日本・アメリカ――の影響)、(2)マンガ読者それ自体と読者環境の形成に関わるもの(読み手の漫画リテラシーの育成とその要件)、 (3)その他(1972年における日本の新聞マンガ状況、時事漫画の変容――政治問題から経済・社会問題への人びとの関心の変化と態度・評価の変化―-、 研究の視点の難しさ――漫画家と研究者のバランスをどう保つか――、など)、に分けられた。
(文責 茨木正治)