カトゥーン部会2008年度第1回研究会
1 日時
2008年8月24日(日)14:00~17:00
2 場所
大阪府立国際児童文学館 セミナー室(tel. 06-6876-8800)
(大阪モノレール「公園東口」駅から徒歩約700メートル)
3報告者
秦 美香子(神戸大学大学院総合人間科学研究科)
4報告論題と概要
「少女マンガ」という舞台の同一性
今回の報告では、「少女マンガ」研究における「少女マンガ」の定義をめぐる問題を取り上げた。「少 女マンガ」の定義に関しては、二つの問題点があると思われる。ひとつには、「少女マンガ」研究において、しばしば「少女マンガ」というジャンルの存在が不 問の前提とされたまま「少女マンガ」の分析がおこなわれているという問題である。また、「少女マンガ」が定義されるとき、それは「『少女』を読者対象とす る(マンガ雑誌に掲載された)マンガ」あるいは「主人公の内面が語りやコマにおける複数の次元で同時に表現されるマンガ」として説明される傾向にある。近 年の「少女マンガ」の多くは、すでにこれらの定義におさまらないため、この定義から始まる分析では「少女マンガ」の終焉を語るしかなくなってしまう。しか し、多くの作り手や受け手にとっては「少女マンガ」はいまだに有効なジャンル区分であり、その意味では「少女マンガ」を終わったとみなすことは難しい。こ れがふたつめの問題である。本報告では、こうした問題意識から、戦後から現在まで大きく変化してきた「少女マンガ」を、その全体を見渡して定義することの 可能性と問題点について、考察を試みた。
この報告に絡めて、「少女マンガ」を「舞台」として捉えるならば、その「舞台」に作り手や受け手はどう関わっていると考えられるかという問題が出た。作り 手と受け手はどの程度「舞台」を共有しているのか、受け手は「舞台」の観客でしかないのか、など、「少女マンガ」の担い手をいかに捉えるかによって「少女 マンガ」の見渡し方が大きく変わることについて議論した。また、「少女マンガ」が「少年マンガ」など別の要素との対照から説明される傾向について、「少女 マンガ」内部の差異を詳細に検討することによる「少女マンガ」の説明が可能なのかという点についても意見が出された。
(文責 秦 美香子)