カトゥーン部会2011年度第3回研究会


Ⅰ日時
12月10日(土):14:00~18:00

Ⅱ場所
早稲田奉仕園セミナーハウス会議室104号室
169-8616 新宿区西早稲田2-3-1(03-3205-5411)

報告者
Ⅲ鎌田大資 氏(椙山女学園大学)

Ⅳ論題
「公共圏としての漫画表現――歴史分析の枠組み構築をめざして」

V報告概要
大正以来の漫画(マンガ)研究の歴史において、漫画は広く戯画的表現の総称として幅広くとらえられてきた。2010年に話題になった東京都の青少年健全育成のための条例における漫画規制の問題は、江戸時代に木版出版物の流通が盛んになって以来の、漫画規制の歴史のなかで捉えなおすことができる。漫画出版の歴史は、ヨーロッパのブルジョワ革命を準備した公共圏の歴史とリンクさせて考えられ、欧米における政治風刺のカリカチュア、カトゥーンは為政者による規制・弾圧の対象にもなってきた。日本においては江戸期以来、出版物規制行政が一時的にゆるやかになった明治初期において、尖鋭な政治批判を漫画表現に託す團團珍報や宮武外骨への筆禍事件などが代表的な規制事例として言及される。團團珍報の茶説の筆者である幸徳秋水の大逆事件における逮捕、処刑によりその流れは途絶え、大正、昭和初期、第二次世界大戦後GHQによる占領期までの検閲制度を準備する。戦後の漫画規制を特徴づける裸体表現に対する取り締まりは、江戸期から明治期にかけての日本の裸体風俗の変遷を考慮に入れつつ、性についてのディシプリンの変遷を裏受ける変数として分析することができる。本報告では、このような論点から具体的事例を考察するための枠組形成の端緒を得ることをめざした。こうした漫画表現の規制に注目し、それを一様に公共圏としての漫画表現の規制ととらえることで、明治初期に先鋭化した政治についての批判的意見表明の権利としての表現の自由の問題が、それぞれの社会、時代状況のなかで捉えなおされる場として再構成できる。討論においては、公共圏として漫画表現をとらえることの意義や、特に考察、注意すべき個別の事例、作品についての基本的事実について助言を受けた。

カテゴリー: カトゥーン部会