著作権部会 2005年第3回研究会
1.表記部会は、平成17年10月13日午後5時~7時半
日本弁理士会館で開きました。
議題:「キャンディ・キャンディ事件の判決後-読者の権利について」(問題提起:牛木理一)議論しました。
今回は、オブザーバーとして安藤健二(作家)氏が出席されました。同氏は、「封印作品の謎」(2004年10月太田出版)を刊行されていますが、その続編 として「キャンディ・キャンディ」についての封印の謎の解明のために、吉村和真理事の紹介で本部会の議論を取材された。
2.この事件の裁判では、東京地裁-東京高裁-最高裁に至るまで一貫してストーリー作家とマンガ家を対立構造に置き、その中間に編集担当者はいても、その 関与度については無視され、前者を原著作者、後者を二次的著作者と決めつけているところに問題の発端があるといえます。最高裁判決によって、法律上は、漫 画家(被告)の絵は、原作者(原告)のストーリーに対し従の立場にあり、原作者の許諾がなければ独自に絵だけを複製したり翻案したりすることはできないこ とが確定しました。しかし、当事者どうしの裁判による決着で、この問題の全てが解決したかといえば、そうではなく、第三者である読者の立場があることを忘 れてはならないとするのが今回の研究テーマの発想です。
3.今回の部会における発言は活発でした。
・わが国のマンガ文化の発達は、あるところまでは作家、編集者、読者などマンガに関わる人々が発展させてきた共有財産のようなものだから、マンガの著作権問題もここからスタートしなければ解決しないのではないか。
・読者の厳しい目がわが国のマンガの発達に大きな役割を果たしたことを考えれば、読者を無視して作者側の都合だけで読めなくなる作品があっていいのか。
・作者側の権利関係のもつれで解決困難な状況に陥ってしまっているならば、もう一つの立場である読者の立場で考えてみるべきではないか。
・「キャンディ・キャンディ」のマンガ部分は、二次的著作物という解釈ではなく、ストーリー部分との共同著作物であるとなぜ解釈できないのか。
そのような解釈ができれば、共有著作権の共有者(ストーリー作家)は、「正当な理由がない限り」、他の共有者(マンガ家)が「キャンディ・キャンディ」の 本を出版したいという申出に対し、合意の成立を妨げることはできない(著65条3項)はずだ。
・マンガ家がストーリー作家の合意なしに、商品化の許諾を与えて製作したグッズの販売が不能となって損害を蒙った業者は、利害関係人であるから、これらの グッズの販売を許諾(合意)しない作家を訴えることが、現状打破の一つの突破口にならないか。
4.出席者名(11名・順不同)
秋田孝宏、馬場巌、牧野圭一、堤 健太郎、三木宮彦、米沢嘉博、尾崎博彦、内記稔夫、龍村 全、牛木理一、安藤健二(取材オブザーバー)
(2005年11月25日)