著作権部会 2005年第5回研究会


〔日 時〕 2006年2月9日(木)午後6時~8時
〔場 所〕 日本弁理士会館第3会議室
〔出席者〕 秋田孝宏、牛木理一、尾崎博彦、龍村全、内記稔夫(50音順)
〔報告者〕 龍村全(弁護士・会員)
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〔議 事〕
研究議題:「続・2ちゃんねると著作権問題」 (報告者 龍村 全)
2005年12月8日に堤弁護士の担当で報告していただきましたが、未完であったことから、今回はその続行しました。ただ報告者は、都合によって龍村弁護士に変更しました。議事の記録は次のとおり。

2チャンネルというインターネット上の巨大掲示板が、世界的に見てもユニークな形で成長してきている。そこでは匿名で意見の書き込みがなされ、さまざま な問題を含み、法律問題になった件もある。名前を明かさずに、意見の近い者との間で書き込みが交わされるため、その空間の中で通用する独特の言い回しなど が発達し、のまネコのような共有のキャラクターまでつくられるようになった。このキャラクターの使用をめぐってトラブルも起こり、匿名であるために持つ大 衆心理的な行動が凶暴性をおびやすいという問題もある。
ベストセラーになった『電車男』も、2チャンネルのあるスレッドから生まれた。この出版は法的には著作権侵害の問題がある。しかし匿名であり投稿者の特 定が困難であるので、新潮社は2チャンネルの許諾を得て出版に踏み切り、大きな問題にはなってないが、版権処理としては不十分ではないかという懸念が残 る。似たようなケースに「ホテルジャンキーズクラブ事件」などがある。
また、インターネット上の掲示板などの書き込みに関することで問題がないわけではない。
「ニフティサーブ事件」以降、掲示板の書き込みによるトラブルがたびたびおこり、場を提供しているにすぎないプロバイダーが全ての責任を負うわけには行かないということから、「プロバイダー責任制限法」という法律ができている。
日本マンガ学会としては、現在、このような匿名の記事を出版するためのルール、のまネコのようなインターネット上の共有のキャラクターとして成長してきたキャラクターをどのように活用するかといったルールについて考えていくことが必要なのではないか。
以上のようなこともあってか、最近、2チャンネルの書き込みの前に、投稿確認として、契約条項を掲げるようになっている。この条項も『電車男』の出版以後、許諾される範囲が広くなるようになっている。
もちろん、インターネット上に契約条件を出せば、契約として有効なのかという問題も残るが、近年の電子商取引の拡大に対応できなくなるので、比較的、契約条件をクリックすることで契約が成立するという考え方が取られるようになっている。
一方、著作権法には、第67条に著作権者が不明の場合の著作物の利用の仕方が記されている。しかし、保証金を相当額つまなければならないことや、かりに 保証金を積んだとしても、誰にその保証金を支払ったら良いかというような問題、自分の著作物だから許諾しないなどと名乗り出るケースもあり、権利者が分 かっている場合、権利者を探すために他の場所にコピーしなければならず、この時の権利処理をどうするカなどさまざまな問題が残る。
しかし、現実問題として、『電車男』内の投稿者であると申し出て裁判となった場合、自分が権利者であることを事実上立証できないのではないかという問題がある。
「ホテルジャンキーズクラブ事件」の場合、この点は簡単な上申書によって処理されている。掲示板が会員制であったため投稿者の特定が比較的容易であったという事情も考えられる。
これ以外でもマンガの著作権問題として、昨年、末次由紀の「エデンの花」がインターネット上で井上雄彦の「スラムダンク」の盗作を指摘され大問題になっ たが、マンガの中で画風が似ていることと構図が似ていることで、著作権上の判断が違ってくる。あるいは、マンガを読んでいない人が似ていると思っても、読 者の間では区別されて読まれていたり、読者から見て同じと判断されても、一般の人からみると別物と判断されるなど、類似ということだけを取っても難しい問 題がある。            (文責・秋田孝宏)

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